偶然が終わらせた恋

  • 作品

    雁

  • 作者

    森鴎外

  • 地域

    文京区・台東区

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東京大学 南研究棟

東京都文京区本郷7ー3ー1
南研究棟 東京大学
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01 東京大学 南研究棟

このスポットについて

岡田と僕の下宿先、上条。現在は、東京大学南研究棟になっています。この上条で夕食に青魚の煮肴が出たことが、岡田とお玉が最後の言葉もなく別れるきっかけをつくったのでした。

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01 東京大学 南研究棟

一本の釘から大事件が生ずるように、青魚の煮肴が上条の夕食の饌(せん)に上ったために、岡田とお玉とは永遠に相見ることを得ずにしまった。そればかりでは無い。しかしそれより以上の事は雁と云う物語の範囲外にある。

森鴎外『雁』より

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02
上野広小路

東京都台東区上野公園4ー4
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02 上野広小路

このスポットについて

文学が趣味の岡田と古本屋に足を止めることが多い僕。古本が仲立ちをし、二人はただの知り合いから友達関係になります。

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02 上野広小路

この散歩の途中で、岡田が何をするかと云うと、ちょいちょい古本屋の店を覗いて歩く位のものであった。上野広小路と仲町との古本屋は、その頃のが今も二三軒残っている。

森鴎外『雁』より

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03
仲町通り

東京都台東区上野2ー12ー1
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03 仲町通り

このスポットについて

仲町で作った名刺の他にも、岡田に何かを渡したいと考えていたお玉。一筆書きたくても学問を学んでいなくて手紙を書けなかったため、贈り物には随分と悩みました。

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03 仲町通り

名刺はこないだ仲町でこしらえさせたのがあるが、それを添えただけでは、物足らない。ちょっと一筆書いて遣りたい。さあ困った。学校は尋常科が済むと下がってしまって、それからは手習をする暇も無かったので、自分には満足な手紙は書けない。

森鴎外『雁』より

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04
湯島天満宮

東京都文京区湯島3ー30ー1
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[開門時間]9:00~17:00(入館は16:30まで)
詳細は公式サイトをご確認ください。

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04 湯島天満宮

このスポットについて

岡田の日々の散歩道。学問の神様として知られる菅原道真公を祀っている神社です。境内の梅の花が有名で、この地の梅を歌った「湯島の白梅」(一九四二年)は戦中時大ヒットしたそうです。

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04 湯島天満宮

寂しい無縁坂を降りて、藍染川のお歯黒のような水の流れ込む不忍の池の北側を廻って、上野の山をぶらつく。それから松源や雁鍋のある広小路、狭い賑やかな仲町を通って、湯島天神の社内に這入って、陰気な臭橘寺(からたちでら)の角を曲がって帰る。

森鴎外『雁』より

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05
臭橘寺
(麟祥院)

東京都文京区湯島4ー1ー8
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[拝観時間]6:00〜17:00
詳細は公式サイトをご確認ください。

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05 臭橘寺(麟祥院)

このスポットについて

岡田の日々の散歩にはもう一つコースがありました。それは周囲にカラタチの生垣をめぐらせていたので「からたち寺」とも呼ばれている、麟祥院をめぐるものでした。

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05 臭橘寺(麟祥院)

寂しい無縁坂を降りて、藍染川のお歯黒のような水の流れ込む不忍の池の北側を廻って、上野の山をぶらつく。それから松源や雁鍋のある広小路、狭い賑やかな仲町を通って、湯島天神の社内に這入って、陰気な臭橘寺(からたちでら)の角を曲がって帰る。

森鴎外『雁』より

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06
不忍の池

東京都台東区上野公園5ー20
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[開園時間]5:00~23:00
詳細は公式サイトをご確認ください。

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06 不忍の池

このスポットについて

もし雁に石が当たらなかったら、もし捕まえた雁が小さかったら。この後のお玉の運命はもちろん、岡田の運命も変わっていたのかもしれませんね。

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06 不忍の池

岡田は躊躇した。「あれはもう寐(ね)るのだろう。石を投げ附けるのは可哀そうだ」石原は笑った。「そう物の哀(あわれ)を知り過ぎては困るなあ。君が投げんと云うなら、僕が投げる」岡田は不精らしく石を拾った。「そんなら僕が逃がして遣る」つぶてはひゅうと云う微かな響をさせて飛んだ。

森鴎外『雁』より

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07
無縁坂

東京都文京区12 無縁坂
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07 無縁坂

このスポットについて

お玉にとって岡田にアプローチする最後のチャンスだったこの瞬間は、幾つもの偶然が重なりあったことで儚く散ってしまうのでした。

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07 無縁坂

なぜだか知らぬが、僕にはこの女が岡田を待ち受けていそうに思われたのである。果して僕の想像は僕を欺かなかった。女は自分の家よりは二三軒先へ出迎えていた。僕は石原の目を掠(かす)めるように、女の顔と岡田の顔とを見較べた。いつも薄紅ににおっている岡田の顔は、確に一入(ひとしお)赤く染まった。そして彼は偶然帽を動かすらしく粧(よそお)って、帽の庇(ひさし)に手を掛けた。女の顔は石のように凝っていた。そして美しくみはった目の底には、無限の残惜しさが含まれているようであった。

森鴎外『雁』より

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題材紹介

雁

森鴎外

散歩中に岡田に一目ぼれしたお玉。どんどん気持ちを募らせるも、偶然がいくつも重なり合ったことで最後のチャンスさえも逃してしまう。「雁」「サバの味噌煮」がキーワードとして知られる、森鴎外の恋愛作品。

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